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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter45「最後に歯医者に行ったのはいつですか? その1」

 大きな病気で治療を受ける際、意外に大切なポイントが口の中の環境です。
 皆さんが最後に歯医者に行ったのはいつでしょうか? 虫歯や治療途中の歯はありませんか、入れ歯をはめている方は、大きさがきちんと合っていますか?

 今回から数回にわけて、私がサポートしている肺がんのYさんの話を紹介しながら、口の中を綺麗にしておくことが、なぜ重病にかかった時に大切となってくるのかをお話しします。

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 Yさんはがんが進行し病院外来に頻繁に行くことは難しいため、医師に自宅に来てもらっています。体調は以前よりも疲れやすく家事や日常生活が億劫になっていましたが、なんとか今年の酷暑も無事乗り切りました。

 今、Yさんの今一番気になっていることは口内炎です。70代ですから普段は入れ歯を使用しています。ただ最近は痩せてきたために入れ歯が合わなくなってきました。そこで、夜寝るときや食事以外の時間は入れ歯を外しています。
 総入れ歯ではないので残った歯があるのですが、先日寝ぼけて舌が歯に当たり、その激痛で目が覚めました。ただ歯に舌が当たっただけなのに飛び上るほど痛くて、何事かと思い鏡を覗き込みました。舌の歯に当たった部分が少し赤いぐらいで、特別異常があるようには見えません。
 しかしそれから数日経ってもちっとも赤味は減らず、歯に舌が当たるとビリビリと痛みます。以前もらった口内炎の薬をつけても改善しません。がんのために強い痛み止めも飲んでいますから、それでもこんなに痛みがあるなんて尋常ではない、と思えました。もしかするとがんの転移かも知れない。
 そんな不安な気持ちを抱えて、Yさんは往診の医師に相談しました。すると、念のため大学病院の歯科を受診した方が良い、と言われました。

 そこでYさんはすぐに大学病院を受診しました。そこでは口の中を詳細に観察した後、感染があるかどうか検査を行い、さらに正確な歯磨きの仕方と入れ歯の手入れの仕方を教わりました。また、唾液の量が減っているため、補うための人口唾液を処方され、これで様子をみるようにと言われました。Yさんは転移という話が全く出なかったことにほっとして帰宅しました。
(続く)


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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