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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter44「ドラッグ・ラグをご存知ですか? その2」

 がん患者さんの抱える問題の一つ「ドラッグ・ラグ」(海外では標準的に使用されている薬剤であるにもかかわらず、日本では承認されていない状況)について、前回の続きです。

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 ジェムザールの卵巣がんに対する適応は、海外では既に81ヶ国以上あり、先進国はおろか、東南アジア、アフリカ諸国もほとんど承認されています。適応されないのは、日本か北朝鮮かというレベルになってきています。先進国と呼ばれる日本で、なぜジェムザールが使えないのでしょう? 仕方がないと諦めていて良いのでしょうか?

 こうした問題意識を持ち、制度に立ち向かい、ドラッグラグを解消しようと、患者団体と医療従事者の一部が中心となって活動を繰り広げています。
 患者会の方たちが主となって、署名を募り、学会に参加し、マスメディアに訴えて、まずはドラッグ・ラグという問題が日本にあるのだということを知ってもらう活動を行いました。そして、患者だけの活動ではなく、理解のある医療従事者とつながり、学会や病院の管理部門、中医協、政治へと働きかけを行っていきました。
 どれも一つひとつは地道な活動でしたが、それが数珠つなぎとなって身を結んでいきました。そしてついに先述のジェムザールは、こうした運動の成果によって、つい最近2010年9月に卵巣がんへ保険適応がされました。

 とはいえ、その他のがん種、他の薬剤について全てが適応されたわけではもちろんありません。こうした問題は、自分自身や親しい人ががんにかかるなど、当事者にならない限りなかなか考えることのない話題かもしれません。
 しかし、今、目の前にこの問題が存在するために困っている患者さんがいて、薬剤承認プロセスがスピードアップすることで救われる命があることを知って欲しいと思います。こうした小さな一歩が、いのちを救うのです。

引用文献
1)木村盛世オフィシャルウェブサイト「「未承認薬?適応外薬検討会議」をガス抜きに終わらせるな!」
http://www.kimuramoriyo.com/moriyotsubuyaki-medicine/20100702.html

2)卵巣がん体験者の会スマイリー 活動報告
http://smiley.e-ryouiku.net/#top


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
医療コーディネーターへのご相談は以下のサイトからどうぞ。
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