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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter42「お金の不安に応える強い味方―介護保険」

 お金の不安シリーズ。最終回は介護保険についてご紹介致します。

 2000年4月1日、介護保険はスタートしました。65歳になると入る新しい保険、として耳なじみのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 介護保険は、介護を必要とする状態となっても自立した生活ができるよう、高齢者の介護を国民みんなで支える仕組みです。また、できるだけ従来の生活が続けられるように、介護予防を通じて支援する仕組みでもあります。

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 そもそもこの保険は、高齢者の介護を支えるために作られた保険ですから、65歳以上で介護が必要であると認定された人が利用できる制度です。
 ただ例外として、特定疾病と呼ばれる16の病気に該当する場合で、40歳以上64歳未満の方にも適用されます。特定疾病には、パーキンソン病やリウマチ、認知症や末期がんなどが含まれます。
 つまり、重篤な病気にかかった時は、40歳以上であれば介護保険を受給できる可能性があることを覚えておくと良いでしょう。

 ただ、ここに一つ課題があります。介護保険の認定までにはある程度の時間が必要だという点です。介護認定がおりるまでには、介護度(これにより介護サービスの内容が決まります)を決めるための手続きが必要です。
 まず保険の申請をし、介護度を認定するための調査があり、その調査に基づいて認定審査会が審査を行う、という段取りです。
 病状が落ち着いている場合には、介護度が変わらないので問題ありません。また、金銭面は申請日にさかのぼって介護保険が受給できるので安心です。
 しかし、末期がんの場合は、容体が安定していないため、介護度が決定した頃には容体が悪化していて、実際の介護度とはかけ離れている、という場合があります。こうなると必要なサービスを受けることができません。

 そこで今年の4月には、厚生労働省老人保険局老人保健課が各都道府県と市町村の介護保険担当課に「末期がん等の方で、介護サービスの利用について急を要する場合は、適切な要介護認定及び介護サービスの提供を行っていただくようお願いします」という事務連絡を出し、がん患者の介護認定の迅速化を促しました。

 自分は末期がんである、という事実を突きつけられることは精神的に辛いことです。しかし、自宅で過ごしたい、と考えている方には必要な介護を受けるための強い味方になるのか介護保険です。医師から「この治療が最後の治療です。効果がなければ次の治療はありません」と言われたら、最後の治療に全力を尽くすことでしょう。
 しかし、それと同時に仮に期待した効果がなかった時の準備として、介護保険の申請を考えてみてはいかがでしょうか。転ばぬ先の杖として備えると良いと思います。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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