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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter35「手術の同意人・立会人は必ず必要ですか? その2」

 今回は、子宮がんで子宮の一部を手術で摘出するという説明で手術室へ入室したAさんのケースを通じて手術の立ち会いについて説明します。

 さてAさんですが、子宮と直腸が癒着しており、子宮全体と直腸の一部も摘出しなくてはいけない状況であったことが手術中に新たに分かりました。しかし、このような場合に手術中の本人に子宮全体と直腸の摘出をしても良いかどうか許可をもらうことができません。
 そこで、待機中の親族が呼びだされ、切除の同意か不同意かを本人に代わって決定します。それが手術立会人の役割です。

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 もしもこの時待機していた方が親族ではなく、子宮の摘出に同意し、病院が摘出を行ったとします。その結果、手術後に親族が病院を相手に「例え他人が許可しても、親族の許可なく(患者の)臓器を摘出した。その結果、○○家に跡継ぎが生まれなくなるという不利益を被った」と訴えたとします。
 病院としては、説明責任を果たしていない、ということで不利な状況に追い込まれることになると考えます。そこで、出来るだけこうした事態は避けたいと考え、患者本人にだけ説明するのではなく、同意人を設け、親族以外の人が立会人なることを避けます。

 しかし、日本の法律では、個人の意思を本人以外の人間(例え家族であっても)が代理で決定することは出来ません。この事例の場合は、手術の立会いをする人間が他人であっても、親族であっても、本人の代わりに意思を決定することが出来ないのです。また、成年後見人も医療行為の決定権(承諾権)は法的に認められていません。
 厳密に言えば、患者さん本人に意識がない時の判断は誰も出来ないということになります。この点は医療現場の実態と見合っていないため、社会問題となっている点です。

 つまり、法的には同意人・立会人は必須ではありませんが、病院が無用のトラブルに引きこまれないために、手術を行うに当たって、自分たちの規則を持っているということになります。そのため、親族が同意・立会いが出来ない場合には、主治医や医療ソーシャルワーカーに事情を説明し、その理由を理解してもらう必要があります。

 前回の記事、「入院時の保証人・身元引受人は必ず必要ですか?」でも同じですが、この場合、こうすれば良いという正解があるわけではありません。内縁の妻や友人・知人に一筆書いてもらって、親族の代理人となってもらうのか、医師に全てを任せるのか、遠縁であっても必ず血縁でなければ病院側が入院や手術を受け入れないのか、はケースバイケースとなります。
 正解がないことですから、真摯に医療側と話し合う姿勢、人間関係の構築、コミュニケーションが重要になります。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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