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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter25「がん検診、受けた方が良いの?」

 医療コーディネーターへ相談を依頼する方の病名は様々です。最近では糖尿病や脳血管疾患が増えてきています。とはいえ、日本人の2人に1人ががんになる時代ですから、やはり一番多い依頼はがんです。そして、がんと診断されたばかりの方がよく話題にすることの一つが検診です。

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 「もっときちんと検診を受けておけば良かった」
 「去年も検診を受けていたのに発見されなかった。なぜ?」
 「しこりがあったのでおかしいと思い検診を受けたら乳がんが見つかった」

 他にも、がんではない患者さんや、周囲の方から「がん検診は受けておいた方が良いのか?」という質問を受けることもあります。

 私の答えは、EBM(Evidence-Based Medicine:根拠に基づいた医療)に基づき、検診の結果死亡率が下がることが分かっているがん検診であれば受ける意味がある、とお答えし、参考になるサイトとして以下をご紹介します。

科学的根拠に基づくがん検診
(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センターより引用)
http://www.ncc.go.jp/jp/kenshin/about/gankenshin.html

 先日、「TBS『余命1ヶ月の花嫁・乳がん検診キャラバン』の内容見直しを求める要望書が提出された」というニュースが報道されたことをご存知でしょうか?
http://www.cancernet.jp/kenshin/

 私はこの要望書を送った有志38名のうちの一人です。要望書は、20代・30代の若年者を対象とした検診目的のマンモグラフィー検査および超音波検査には、有効性を示す科学的根拠がないにもかかわらず、視聴者、ならびに国民に対する正しい情報の発信を責務としているはずのテレビ局がこうした検診を積極的に行うことは、倫理上きわめて問題が大きいと訴えています。

 がん検診のメリットは、そのがんで命を落とす確率を少なくできる点ですが、一方で偽陽性(本当は陰性であるのに検査結果は誤って陽性と出ること)及びそれによる本来感じることのない不安、放射線被ばくなど、様々なデメリットがあります。科学的根拠がないということは、こうしたデメリットがメリットを上回る恐れが高いということです。もちろん20代・30代であっても検診によってがんが発見される方はいらっしゃいますので、デメリットを十分理解したうえでなら、個人が検査を受けることは問題ありません。

 医療は出来る限りEBMに基づいて行われるべきものです。しかし、時にEがEvidenceではなく、Experience, Emotion, Economy based medicineとなっている場合が見受けられます。医療に関する情報収集はEBM、つまり“医療における科学的根拠”を意識する必要があることを覚えておくと良いと思います。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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