Letter17「医師のスキンシップ その1」
先日、がんを患っているHさんのご自宅へ伺いました。Hさんは70代後半の一人暮らしです。がんの状態は思わしくなく、残念ながら治療はこれ以上できないということで、自宅に医師に来てもらって診察(訪問診療)を受けています。
Hさんからは、医師の診察に私も同席して診療がスムーズに運ぶよう手助けをして欲しい、という依頼でした。
往診して下さったB医師は、働き盛りの年齢で、人当たりの柔らかい人でした。患者さんに寄り添おうという気持ちが表に出ている方で、言葉づかいは平易で、横柄な態度や冷たい物言いとは無縁の方でした。
その日Hさんは、これまでかかっていた大学病院の医師から
「次回の診察以降はもう大学病院へは来なくて良いと言われた」
「これからはB医師を主治医とするようにと言われた」
ことをB医師へ語りました。B医師は大学病院からHさんが見捨てられたと感じたのではないか? と、とても心配をしてくれました。そして脈や血圧、患部などを一通り診察し、内服薬の確認をし、次回の受診日を決めて帰られました。
B医師が帰ったあと、Hさんは私に「岩本さん、B医師のことどう思う?」と聞きました。そして「スキンシップが多くて、何だか変な感じ。どうも信頼できないのよ」と言いました。
確かに私が見ていても非常に濃いスキンシップでした。B医師が座ったのは患者さんの横。腕がつくほど近い距離でした。脈や血圧を測る合間に肩を抱く。Hさんが不安を訴えると、「大丈夫だよ、任せておいてね」と言いながら手を握る。これが50分ほどの往診の間、5、6回見られました。
最近は、医師への批判として、医師の対応が冷たい、パソコンばかり見て患者の顔を見ない、身体を触って診察しない、などがよく言われます。しっかりと診察をし、優しい物腰、言葉でスキンシップを多く行うB医師は理想のように思えますが、正直申しますと、Hさんと同じように私もB医師に信頼を感じることは出来ませんでした。
その原因はなぜなのでしょうか? 次週考えていきたいと思います。
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