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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter 4 「良い医師(病院)を紹介して下さい その4 相性の良い医師(病院)がいいです」

 前回までは、私にとっての「良い医師」を探すためには3つのヒントとして

 ○専門性
 ○利便性
 ○相性

があること、そして「専門性」と「利便性」についてお伝えしました。今回は、ヒントの3つ目医師(病院)との「相性」についてです。

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 「医師選びはお見合いだ」や「どんな人にも合う医師はいない」「医師も人だから患者さんとの相性がある」と世間でよく言われています。この相性が良いというのはどのようなことをいうのでしょうか?

 患者と医師にも相性がある、という説明をする際によくお話する事例があるので紹介します。それは医師の解熱剤の使い方です。解熱剤とは熱を下げるための薬ですが、この薬を使う熱の目安は一般的に38.5度以上です。
 では、実際にあなたの熱が38.5度になったとします。あなたは解熱剤を使いたいですか? それとも、体が辛ければ38.0度であっても使いたいでしょうか? もしくは39度であっても使いたくないでしょうか? それとも、「そんなことは医者が考えることだ!」「そんなこと患者に聞くもんじゃない!」と思うでしょうか?
 例えば、「医師が決めるもんだ!」 と思っている患者さんが39度の熱を出した時、医師が懇切丁寧に解熱剤の身体への影響を説明し、私はこのような理由から解熱剤は使わない方が良いと思いますが、あなたが決めて下さい、といったらどう思いますか? 「その医師はとんでもないやつだ!」と感じるかもしれません。「ただ黙って辛い症状をとるのが医師の責務だ」「患者である自分に決めさせるなんて責任逃れをしている」と感じるかもしれません。

 しかし、普段から我慢強く、「出来るだけ薬は使いたくない」「薬である以上副作用や後遺症が発生する確率はあるのでそのような犠牲にはなりたくない」と思っている患者さんに対して医師が、「辛ければ38.5度以下でも使って良いですよ」と言えば、この医師は薬を甘くみている、リスク管理の出来ていない医師だと感じるでしょう。
 患者さんと医師双方の薬に対する考え方、症状への対処の仕方がぴったりと合った時、この両者の相性が良いといえましょう。

 また、別の例を挙げます。最近では男性看護師が増えていますが、女性特有の病気で入院している患者さんに、男性看護師の存在をどうしても許せない、自分の看護は絶対にして欲しくない、男性看護師を雇っていて、女性に交代してくれと言っても変わってくれない病院の制度はどうしても許せないという人もいます。
 一方、技術が信頼出来るのであれば男性であっても女性であっても構わない、一々女性看護師がいいか男性看護師が良いかと聞かれるのは、逆に患者に性を意識させる行為であっておかしいと感じる、と考える人もいます。

 これは、私が医療コーディネーターという相談活動を通して、患者さん一人一人が同じ体験しても違う感想をもち、医療に対する知識や物事の捉え方が大きく異なることを実感したことです。
 つまり自分が今、どのような病気であり、どのような精神状況にあるから何を医療現場に求めているのか、ということが見えてこない状態では、どのような医療者が相性の良い医療者なのかは見えにくいものなのです。

 相性の良い医師(病院)を見つけるには、普段から医師と話し合いを重ねることが大切です。なぜこの薬を使うのか、なぜこの症状にこの処置をするのか、もしくはしないのか。医師の判断の根拠を知り、その感覚と自分の感覚が合致しているかどうかを判断します。この繰り返しが自分と医師の間の相性を知るために重要です。手間暇かかることですが、人との相性を知るためには、双方向のコミュニケーションは不可欠です。

 まずは普段の健康管理から、掛かり付け医と地道なやり取りを始めてみてはいかがでしょうか。自分が医師に求めている「相性」が見えてくると思います。

 さて次のお手紙では、これまでのまとめをお伝えします。次回は、2月10日の更新の予定です。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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