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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter 1 「良い医師(病院)を紹介して下さい」

 皆さんは、『医療コーディネーター』という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 最近のある調査では、約半数の方が『聞いたことがある』と答えています。医療コーディネーターは、病気になった方の本音の悩みに対して、解決策を共に考えるベテラン看護師です。どこの医療機関にも所属せず、中立な立場であることが特徴です。この連載では『病院には相談できない悩み』をお寄せ頂き、それを解決するための、あの手この手をお伝えしたいと思います。

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 まず始めは『良い医師(病院)に出会いたい』という悩みのお手紙に答えます。この問いは、病気になれば誰もが抱くものでしょう。神の手やスーパードクターを紹介する、という番組もテレビで数多く放映されています。
 病気になっても、世界のどこかに自分の病気を完全に治し、健康な時とまったく同じ身体に戻してくれる医師がいると信じている人も多いことでしょう。
 しかし、そんなことは本当に可能なのでしょうか? 治療すれば必ず良くなる、副作用も後遺症もなく元の体に戻すことができる、という医師が現実にいるのでしょうか? 
 とはいえ、手術成績が良い医師、最新の治療法を取り入れている医師など治療技術は医師によって差があることもまた事実です。

 病気が複雑化した現代では、治療すれば元通りの体に戻る場合はまれです。それは重い病気であればなおさらです。
 例えばがんの手術をすれば、傷の痛みや身体の不具合、再発の不安を抱えて生きることになります。医学的に手術は成功しても、それは「治った」ということではありません。治ったと医学的にいうには、さらに5年以上の歳月が経つのを待たなければいけません。しかし大抵の人は、がんが見つかり、医師に手術が成功したと言われれば、自分のがんは治ったものだと思うでしょう。
 そのままがんが治れば、その医師は良い医師と呼ばれ、残念ながら再発や転移があればその医師は良い医師とは呼ばれない、ということはままあります。医師は病気を治すために一番効果のある方法を薦め、その治療の良い点・悪い点を説明します。しかし、そもそも元の体に戻る、完全に治る、ことをゴールにしている患者さんとは話が噛み合わない場合があります。
 患者さんと医師、両者が一つの治療、一つの病気に関して互いの認識をすり合わせ、同じゴールを設定する作業は非常に大切です。完全に治るとは言い切れないが、それでも自分にとって最高の治療を受けるのだ、と心から思え、そしてその医師に全てをまかせようと思えたとき、その医師は自分にとって良い医師となるのだと私は思うのです。
 つまり、患者本人が納得して治療を選ぶことがとても重要なことなのです。

 良い医師とは、最高の治療技術を提供できると同時に、患者本人が納得して医療を受ける状況を作り出せる人を指します。
つまり、私にとっての良い医師が、他の誰かにとっても良い医師であるとは言い切れません。ですから、「良い医師を紹介して欲しい」という問いは、簡単には答えられない難しい質問です。

 それでは『私にとっての良い医師』はどうやって探したら良いのでしょうか。この続きは次回のお手紙にて。1月20日の予定です。


※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
医療コーディネーターへのご相談は以下のサイトからどうぞ。
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