あほやけど、ノリオ
今回の震災のことを考えていたら、ふとこの本を読み返してみたくなりました。『あほやけど、ノリオ』。ダウン症で知的障害のあるお兄さんとの半生を神戸生まれの落語家さんが綴った本です。ダウン症や知的障害のことを「あほ」なんて言っていいの? と思われるかもしれませんが、それがいかに愛情のこもった自然な表現であるか、読み進むうちに気づかされるような内容になっています。落語家らしい洒落と毒の効いた語り口で、「障害」のある人が家族にいる人生を笑いながら読むうちにすこし泣けてくる…、そんな本です。
この本の後半には著者が阪神大震災に被災したときのエピソードがいくつか語られています。避難所で一席落語を披露したあとで、知り合いのダウン症の子どもの母親に出会うのですが、その親子は「迷惑をかけるから」と避難所ではなく被災した家に留まっていると聞かされます。「このお母さんに「迷惑やから」と未だに思わせている、この社会こそ地震で潰してほしい、と思う」。著者の言葉が胸に響きます。
今回の震災でもこれと同じことが起こっていると報道されています。日本人の助け合いの精神・規律の正しさが海外から賞賛されているようですが、そこに障害や病で介護が必要な人達も入っていてほしいと願います。そんなことを考えさせられる本です。よろしければご一読ください。
(by 地震恐怖症K)