永遠の別れ
「人はいつか死ぬ」と実感した幼い日、この世の中で一番の心配事は「親が死んでしまうこと」となりました。風呂の用意に行った母が溺れてないかとそっとのぞきに行ったり、仕事に出かける父に唐突に「(事故に)気をつけてね」と手紙を渡したり。その心配は形を変えこそすれ、大人になったからといって消えるものではありません。親の老いに直面するたびにショックを受けてしまうのは、幼い日の心配事の延長線にいるからなのでしょう。
著者のキューブラー・ロスは、著書『死ぬ瞬間』の中で、人が自らの死を受容する過程で「拒否→怒り→取引→抑うつ→受容」の5段階を経るとした著名な精神科医であり、遺作『永遠の別れ』で彼女が選んだテーマは、遺族のケア(グリーフケア)です。
どうしようもない絶望と、身をもがれるような苦しさ、湧きあがる怒り、そして虚脱感。家族のみならず、大切な人を亡くすということは人生において最大の悲嘆であることに間違いはありません。そんな心の動きを客観的に解説する著者の言葉は、優しく穏やかなもので、希望さえ感じられました。
読み終えて、長い悲しみの果てにいつか訪れるひとすじの光の訪れと、立ち直る人間の潜在能力を信じたいと強く思いました。
(by まめたま)