認知症ケアの心 ぬくもりの絆を創る
認知症ケアにかかわる人なら必ず用いる「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R)」を開発した著者が、認知症の医療とケア、これまでの歩みについて著した書。
第1部ではケア論について語られています。周囲の人とコミュニケーションをとることが難しくなっていく認知症という病には、絆を再構築することがもっとも大切となります。では、絆を創るためには、何をすればよいのか――。知識や技術だけでなく、理念や心構えにまで触れて、介護する者にエールを送っています。
第2部では、認知症という「治らない病」に向き合った、著者の40年の歩みが収載されています。それは著者の自叙伝ですが、日本の認知症医療・ケアの歴史をたどることになります。認知症ケアはここ数年で格段の進歩を遂げましたが、その素地を諸先輩方が何十年も掛けて積み上げてきた努力の結果だということを、実感いただけることでしょう。
第3部では、恩師・新福尚武先生との貴重な対談が収載されています。93歳と78歳(共に収録当時)の老年精神医学者が語る、認知症とそのケア、脳科学、自身の老いや死の話は、大変含蓄のあるものです。
本書は、著者が81歳になられた今だからこそ後人に伝えたい、認知症ケアで大切なこと、心構え、自らの原点、これまでの歩み、恩師との対談が収められた集大成です。
近年、認知症の診断は格段に進歩し、ケア論も熱く語られています。一般の人の認知症の人に対する偏見も少なくなり、社会全体で認知症の人を支えようという機運が高まっています。そうした今だからこそ、今一度立ち返りたい永遠のスタンダードが記されています。
(by てらこ)