容疑者Xの献身
今さらながら、たまたま手に取って読んだ人気ミステリー。一言でいうととにかく哀しい、切ない。学生時代、天才数学者といわれた石神は自らの才能を恃み、積極的に他人と交わろうとしなかったため不遇の人生を送っていた。そして彼は、想いを寄せる女性を守ろうとするあまり、彼女が犯してしまった殺人を隠すための完全犯罪を企てる。
そんな彼が唯一、お互いに才能を認め合った男が、物理学者の湯川学。久しぶりに会った二人は再会を懐かしむが、石神の異変に気づいた湯川が、やがて彼の企てた完全犯罪を解明していくことになる。
とにかく次が気になって、途中で止められない展開のおもしろさ。そしてエンディングの、この世に二人といない、好敵手を失った湯川の悲しみ。自らを犠牲にしてまでも叶えようとした望みが叶わないと知ったときの石神の慟哭がとにかく哀しい。
(by うしお)