ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験
日本人宇宙飛行士は、なぜあんなにいい人たちなのでしょうか? 嫌なところの一つもないものかとうがってみても、テレビや雑誌で目にする彼らの態度はいつも穏やかで自然体。超エリートでありながら、まったく不遜なところが感じられません。やさしい言葉で誰にでも理解できるように語られる彼らの話は、暗い世相のときでさえ、未来へのひとすじの希望を感じさせてくれます。
この本では、2008年6月から始まった日本では10年ぶりとなる宇宙飛行士の選抜試験の様子が紹介されています。963人の中から最終選抜に残った10人の候補者たち。すでにそれぞれの世界で成功していると思われる彼らが、その生活基盤も賭して挑むのは1週間にわたる閉鎖環境試験です。
外部と遮断された狭い施設の中に入った10人は、常にモニターで観察されながら次々と課題を与えられます。その間、緊張した場の空気を和ませるユーモアから、こなした課題の成果を全否定されたときの対応までもがすべて審査対象。国内での試験を終えた彼らは、その足でNASAに向かうのですが…。
壁一枚隔てた外は死の世界である国際宇宙ステーションで過ごす人材に求められるのはどこまでも人間力。加えて彼らには、子どものころからの夢をまっすぐ語れる純粋さがありました。「いい人」という印象は、人間として尊敬に値する「良い人」ということの表れだったようです。
あらためて、たくさんの子どもたちが「宇宙飛行士になりたい」と言える健全な日本であれたらいいなと思いました。
(by まめたま)