生きる
「生きる」って簡単なことじゃない。悩みが次から次へと生まれてきて、他人から見れば大したことない悩みでも、本人にとっては大きかろうが小さかろうが悩みなのだ。
石田又右衛門は父の代より仕えた藩主の恩を受けて家禄を得、平穏無事な人生を送っていた。そんなある日、筆頭家老に呼び出され、容態重篤な藩主に殉じて「追腹を切ること」を禁ずると言い渡される。藩主の後を追う強い決意があったわけではない又右衛門は、筆頭家老が禁ずると言われれば致し方ないと自らに言い聞かせ、その指示に従う。
しかし亡き藩主の恩に対しては腹を切って示すのが忠誠の証だった時代、恩を受けながら生き続ける又右衛門に対しては周囲からのあからさまな嫌がらせ、罵り、蔑みが浴びせられる。さらに追い打ちをかけるような出来事が又右衛門を襲う。
失意のどん底にあって又右衛門は、なぜ自分だけがこんな目に遭うのか。周囲への恨み辛みを書き綴ってみた。しかし書き出してみると、なにもかもそれほど大したことではなく、自分がもう少しなにか力を出していれば克服できたのではないかと思わされることばかりであることに気づかされる。
生きるって辛いなと感じたとき、すこし広い視野からこれまでと違う見方をすると、そこから立ち直ってまた新しい自分を生きられる。そんなことに気づかされる1冊です。
(by うしお)