「大人になりきれない人」の心理
幼児期の子どもは、何をするにも大人の注意を引きたがります。
でんぐり返しをしては「見て、見て!」、からっぽになったお茶碗を見せては「見て見て!」。「全部食べたの!えらいね〜」と言われて、満面の笑顔になる姿はとてもかわいらしいものです。でも、これが5歳児ではなく、身の回りの大人だったらどうでしょう?
「親から充分注目された(=愛された)、存在を認められた」という充足感を自信に、やがて幼児は子どもだけの世界へ飛び込んでいきます。その後、思春期、青春期、それぞれの時期に用意された楽しみを自ら謳歌し、苦しみを乗り越えながら、人は大人になってゆくのです。しかし、最初の段階をクリアできず、精神的成長を遂げられないまま体だけが大人になってしまった人たちがいます。著者はそれを「5歳児の大人」と名付けました。5歳児のままの父親、母親、先生、会社員、そして5歳児の私。どうやら世の中には5歳児が溢れているようです。
はた迷惑であるという以上に問題なのは、著者いわく「5歳のまま大人の荷物を背負わされた人は生きるのが辛くてたまらない」という点です。いつも子どものように相手に何かを求めるばかりで、当然思うように得られず、「なぜ私ばかりがこんな目に」「誰も私を認めてくれない」そんな思考の袋小路から抜け出すことができないまま年老いてゆくのです。
自分の中のわけのわからない苛立ち、あるいは、理解しがたい他者の行動、そんなものに触れたとき、その原因の一つとして考えてみてもいいかもしれません。ちなみに本の最終章には処方箋がついています。
(by まめたま)