くじけないで
この本は98歳の詩人の処女詩集です。
柴田トヨさんが詩をつくり始めたのは、なんと90歳を過ぎてから。
頁をめくるごとに、トヨさんのみずみずしい言葉が、日々の忙しさでささくれだった心を優しく撫でてくれるかのようです。
トヨさんの長い人生のなかには、奉公、戦争、離婚、離別といった、つらい経験も多くあったわけで、何度も心が蝕まれてしまいそうになったこともあるのでは・・・と想像するのですが、それらを乗り越えたうえで、人間はこんなに穏やかな境地に立てるものなのかと驚かされました。
だからといって、ただただ好好爺(婆?)礼賛というわけではありません。
医師に(必要であるとはいえ)『「今日は何曜日? 9+9はいくつ?」なんてバカな質問はしないでほしい。「柴田さん、西条八十の詩は好きですか? いまの内閣をどう思います?」なんて質問ならうれしいわ』と言える聡明さ、この知性がトヨさんをいまに導いたのではないかと思います。
穏やかに年を重ねる、難しい、これは生涯かけての修行ですね。
(by まめたま)