宵山万華鏡
最近は花見・紅葉の時期でなくとも、どこかの雑誌は必ず特集している京都。テレビをつければドラマも旅番組も京都が舞台。京都好きの人口は年々増えている気がします。
そういう私も京都好きの端くれ。以前は、今の今まで親しく話していたご近所さんが店を出た途端、悪口を言い始める料理屋の大将の姿などに面食らったものですが、やがて、言うも言われるも承知の上、そうして持ちつ持たれつ暮らしている様を楽しく見学できるようになりました。
小説の舞台となる「宵山」は、京都の初夏の風物詩である祇園祭のハイライト「山鉾巡行」の前夜祭にあたります。夕方になると各山鉾の提灯に灯がともされ、街には夜店が出て賑わうのだとか。宵闇といえば京都の「妖し」の出番。登場する人も、人ではないものも、どこか憂いを秘めていて、ちょっと意地悪、それでいて気高さと不思議な愛嬌をもった者ばかり。これぞまさしく京都の香り、森見文学の神髄です。
小説でときに行間が重要な意味を持つように、京都の町並みは、その隅々にまで愛すべき京都人気質が漂うからこそ魅力的なのだと思う今日この頃。 真夏の蒸し暑さと何十万人の人出に恐れをなして、今までこれだけは敬遠していた祇園祭ですが、今年こそ勇気を出して行ってみようと思う物語でした。
(byまめたま)