シズコさん
何を言ってもかみ合わない、やることすべて裏目に出てしまう。歩み寄ってみても無駄。
そんなときはもう、可能な限り棲み分けて、相手との接触を最低限にすることで互いに傷つけ合うのを避けることにします。
ただ、そんな相手がたまたま家族の1人であったなら。しかも本来最愛であるはずの母親だったとしたら…。でもこれ、そんなに珍しいことではないのかもしれません。
まだ甘えたい盛りの4歳、洋子は心細くなって無意識につなごうとした手を、舌打ちとともに母親に振り払われるという経験をします。
心を尽くしたところで伝わらない、そんな絶望的な経験を繰り返しながらも、その境遇に屈することなく成長するのですが、時は流れ、自身も齢60を迎える頃、痴呆が進む母「シズコさん」の最期を前にさまざまな記憶と思いが交錯します。
母親が最後に娘に与えた課題は、人間にとってもっとも難しい「許す」という行為だったのかもしれません。これもまた、ひとつ親子の形であることに間違いありません。
蛇足ながら、著者はあの「100万回生きたねこ」の佐野洋子さん。なるほど、もう一度絵本を読み返してみたくなりました。(byまめたま)