本デアル
著者:夏目房之介
発行:
毎日新聞社
ISBN:978-4-620-31931-5
価格:¥1,785(税込)
明治の文豪、夏目漱石の孫といえばこの人。夏目房之介さんが書いた、サクッと読める書評集です。この「サクッ」は、手を抜いて書いたとか、斜め読みして〆切に間に合わせたというたぐいのものではなく、真っ向から褒めそやすことに照れを感じた結果こうなった、というカンジ。古武術で名を馳せた甲野善紀さんの『体から革命を起こす』から、映画では松山ケンイチが登場人物Lに酷似していた原作マンガ『DEATH NOTE』まで、マニアックな乱読の限りを見せてくれます。
歯切れのよい書評のあいまに、夏目家の風習や祖父・漱石のひととなりが書かれているのも魅力です。
つられてマニアな話をすると、この本をデザインした祖父江慎さんは大の漱石ファンとのこと。それもあって、今回の本の文字組みを明治に出版された『坊っちゃん』の初版本と似せた造りにしたそうです。現代の組版技術をフル活用し、当時の活版や文字の配列を再現したというから、「そこまでやるか」と「おそれいりました」が交錯する、なんとも不思議な読後感の1冊です。(by こゆき)