チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷
せっかくだから違うジャンルに挑戦してみようと思い、手にした1冊でしたが、この「チェーザレ・ボルジア」という人物の魔性に、すっかり虜になってしまいました。
作者である塩野七生(しおの・ななみ)さんは、イタリアで長く暮らし、名著を残した作家です。その語り口は、2Hの鉛筆でサラサラと書きつづられたような印象で、硬質で端正な文章がかえって読者を物語に引き込みます。
彼女が描くチェーザレ・ボルジアは、その筆致にも負けないくらいの端麗辛口な男です。みずからの地位と富と美貌を秤に載せ、自分に足りないものは持てる者から剥奪する時を冷静に待つという策士として描かれています。実の弟であっても容赦しません。目的達成の妨げになると思えば、夜陰に紛れて命を奪います。野望を抱き、短くもまばゆい人生を謳歌し、そして人びとに恐怖されつつも熱狂的に慕われた男の生き様がここにあります。
草食系男子諸君、必読の書でしょう。(by こゆき)