いけちゃんとぼく
とはいえ、天気は悪くとも蒸し暑く、空気も重い昼下がり、書店での友人との待ち合わせ時間に少し早く着いた私は、ビジネスマンで混み合う店内で、すでに話題になっていたこの本を軽い気持ちで手に取りました。
なにげなく頁を開いて数分後、堪えていた涙が限界を超えました。その後は鼻水も流しながら、ハンカチ片手にレジの真ん前の平積みコーナーで泣きました。スーツ姿のお父さんたちに混じって泣きました。隣でせっせと本の整理をする店員さんをよけながら読み終えたときには、すでに友人が到着していました。
小学生の「ぼく」と、ぼくを見守る不思議ないきもの「いけちゃん」。
こども時代、それは決して大人たちが思うほど楽しいことばかりではありません。悲しみは真正面から受け止めてしまうし、心がむき出しな分だけ傷つきやすいし、そのくせ平気で他人を傷つけてしまう残酷な時期でもあります。口べたで不器用な子なら、なおさらそうかもしれません。そんなこどもの頃を思い出しながら、「ぼく」の目線で読んでいくうちに、いけちゃんの言葉に励まされ、教えられ、やがては大人になった今の自分が癒されていきます。そして、自分もいけちゃんになりたいな、なれるかな?そんな気持ちになりました。
この物語は実写で映画化もされていますが、ストーリーを知って、いけちゃんの声を女優の蒼井優さんが担当していることに深く納得しました。
夏の終わり、子どもから少年への旅立ち。大人になったあなたの心に染みるこの一冊。(byまめたま)