滝山コミューン1974
舞台は新設の小学校。通う生徒は、新興マンモス団地の住人。時は革新派の政治家が票を伸ばし、全共闘運動がまだ余韻を漂わせていた頃。そこでどのような学校教育がなされ、教師やPTAにはどのような思惑があったか。それを当時その小学校に通った著者が、丹念な取材と自身の感じたことを織り交ぜながら解き明かしていきます。1970年代に小学生だった人には、きっと「あれは、こういうことだったのかも…」と思い当たることが多いのではないかと思います。
タイトルにある「コミューン」とは、独自の価値観のもと小規模な共同体を営む社会を意味します。小学校というコミューン、団地というコミューン、革新的な学校教育を行う共同体というコミューン。地域や場面を変えれば、すぐそこにある話です。
今思えば、かなり危ういバランスで、私たちは大人になってきたのだと薄ら寒くなりました。しかし、この染みついたバランス感覚こそ、現代社会で生き続けるための最大の学びなのかもしれません。皮肉なことです。
本当は、出る杭がニョキニョキ飛び出していてこそ、おもしろい世の中になりそうなんですけどね。(by こゆき)