嘘つきアーニャの真っ赤な真実
まだ見たことのない母国ギリシアの抜けるような青空につよく憧れていたリッツァ。
嘘ばかりつくがその心根の優しさからだれからも愛されていたルーマニアのアーニャ。冷静で優秀だがどこか孤独なユーゴスラビアのヤスミンカ。彼女らは父親のイデオロギーが縁で出会い、それぞれがそれぞれの事情を抱えながら母国を離れて来ている。そして母国を離れているだけにそれぞれが強い愛国心を持っていた。
マリが日本に戻ってからの東欧社会主義諸国では、プラハの春、東欧革命、ソビエト連邦の崩壊といった大きな変動が起こる。
そして30年後。マリは音信不通となった彼女らに会うため再び東欧諸国を訪ねる。そこで語られる彼女らの人生は、社会の変動に翻弄され、多くの怒り、悲しみ、喜びを乗り越えてきたものだった。そして国家、民族、宗教、イデオロギーなどの対立が引き起こしたこうした変動は、彼女らの考え方も昔とは大きく変えていた。
国家や時代という大きな波に抗いたくとも抗えないという厳しい現実、それでも人間はそれらを乗り越え生きていくという強さ、そしてなにより変わることのない友情が起こした奇跡のような再会に胸が熱くなる。(byうしお)