わが家の母はビョーキです
症状は100人いれば100通りあるようですが、なかでも、(人ではない)何者かからの命令が聞こえるといった幻聴や、誰かに尾行されている、周囲が自分の悪口を言っているといった被害妄想などが代表的な症状です。また、人との交わりを避ける、無気力などといった状態になることもあるようです。発作ともいえるそれらの症状がありながら、何事もなかったかのように普通の状態にもどるので、見守る家族も対応に苦慮します。
母親が発病したとき、著者はまだ4歳。
子どもの前で死にたがったり、ときには幻聴のせいで我が子にまで包丁を向ける母、ギャンブルに溺れて、まったく家庭を顧みない父との生活。友達にも言えず、相談する大人もいない。これが活字の読み物だったなら辛くて読み続けられないかもしれません。しかしそこは漫画本のよさ。「統合失調症」を「トーシツ」と置き換える軽妙さで、まだ小学生の著者が、母の発作を察知すると事前に包丁を隠したり、悪魔払いのためにひとりで宗教団体に入信したりといったエピソードをユーモラスに味付けし、リアルなトーシツライフを描いています。
とはいえ、著者にとって半生を振り返ることはかなり辛い作業だったはず。
著者は、長年苦しんできた母親の「統合失調症」が、「脳の病気であり、治療可能であること」を知ってからは怖くなくなったと言います。回復へ向かうまでの親子の経験を、人知れず病気に苦しんでいる人やその家族を励まし、病気を世間に伝えることで誤解や偏見をなくしていくことに役立てたいと願う心意気に感謝です。(byまめたま)