40(フォーティ)
そんなイメージが先行して、実はなかなか読むことの少なかった石田さんの本ですが、ふと手にしたのがこの『40』です。
40歳になった男が、仕事や家庭、お金、はたまた人生に行き詰まり、ため息ばかりついて生きているところから物語は始まります。なかばやけくそで始めたウェブサイト上での仕事募集を兼ねたブログに、あるとき謎めいた依頼が。その先には、男が自分自身の生き方を見つめ直す出会いが待っていました。
本書に収められた7つの連作にいろいろな「40歳」が登場します。決して若くなく、かといって高齢者でもないこの世代のリアルと、それに対する爽やかな止揚が描かれています。
「よけいな荷物を全部捨ててしまっても、人生には残るものがある。それは気もちよく晴れた空や、吹き寄せる風や、大切な人のひと言といった、ごくあたりまえのかんたんなことばかりだ。そうした『かんたん』を頼りに生きていけば、幸せは誰にでも手の届くところにあるはずだ」
この言葉は、私たち40歳への温かなエールのように感じます。すべてうまくいかなくてもかっこわるくても、ここまで生きてきたことを素直に喜び、感謝していいのだと言われている気がしました。
折しも、30代の自殺率が急増している昨今、続く世代にも伝えたい、伝えるべき、希望の萌芽。(byこゆき)