ミスター・ヴァーティゴ
彼はある晩、不思議な男に声をかけられます。
「おまえには天賦の才能がある。空を飛べる術をおまえに授けよう。もし4年経って飛べなかったら、わたしの首をおまえにやろう」
続く物語は、ウォルトが不思議な男とともに、いかなる修行を積み、空を飛んだか、その後彼の身にどのような事件が起こり、どんな人生を歩んだか。本は「ワンダーボーイ」と呼ばれるに至ったウォルトの独白で進みます。
ひとりのストリートチルドレンの眼を通して語られるこの世界は、むごいこと・不条理なことを平気でする、大人の汚さ・嫌らしさに満ちています。それでもなお、慈しみや信頼、支え合い、愛することを通して人間は輝きを放つものなのだ。そう彼に教えるのは、そんな世界に生きる大人たちです。
作者ポール・オースターは単なるファンタジー小説に終わらない、人生経験のある大人にこそ読んでほしい内容に昇華しています。(byこゆき)