進化しすぎた脳
そんな私でもおもしろく読むことができたのが本書。「脳」について最先端の情報を解説したものだが、中高生に語った講義が基になっているので、脳という複雑なものを比較的わかりやすく語っている。
また、脳について医学・生物学的な側面にとどまらず、「こころ」「意識」といった哲学的な側面からも捉えて説明しているので、知的好奇心がくすぐられ、「へえ〜」って思わされることが多かった。
水頭症という脳の成長が妨げられる病気になると、大脳の体積が正常な場合の20分の1になってしまうこともあるが、多くの場合は正常に生活することができ、中には大学の数学科で首席をとる人もいる。こうしたことから著者は、人間の脳は環境に適応するために必要最小限に進化したのではなく、過剰に進化したのではないか、と述べる。つまり、脳は、残念ながら<人間の体>という性能の悪い乗り物に乗ってしまったため、その能力を使いこなされていない、と。
カバーには、「あなたの人生もかわるかもしれない?」との宣伝文句があるが、確かに中高生の頃この本に出会っていたら人生が変わっていたかもしれないが、さすがにこの歳では。ただ、普段聞くことのない「βアミロイド」「ヘブの法則」といった言葉に触れるだけでも脳に新たな刺激を与えたことは間違いないだろう。脳トレに1冊いかがですか。(byうしお)