沖縄文化論―忘れられた日本
残念ながら写真集はすでに絶版で、代わりに手に入れたこの本。手にしたものの長い間読まないままでしたが、沖縄旅行帰りの友人の話に触発され改めて読んでみたところ、氏がまた優れた民俗学者であり、随筆家であることを知りました。題名こそ少し難しそうなのですが、返還前の沖縄を訪れた経験を元に、芸術家ならではの視線も交えながらもわかりやすい文章によって、沖縄の人、信仰、文化の本質に迫ります。古い本ですが、その内容はそれまでに読んだ沖縄に関するどんな本よりも新鮮で興味深いものでしたし、それまで漠然と空を掴むように感じていた沖縄の感触を、筆者の確かな言葉で認識する気持ちよさがありました。
特筆すべきは、久高島で12年に一度、午の年に行われるという「イザイホー」をも取材している点。「イザイホー」とは、最高神官のノロ(高齢の女性)を中心に、久高島で生まれ、島に暮らし、島の男と結婚した女性全員が巫女となって執り行われる、島でもっとも厳粛な神事です。残念ながら1978年を最後に後継者不足のため執り行われておらず、今では幻の儀式となっているようです。
筆者は沖縄文化の中に、素朴さ、自然に対する畏怖の念といった西洋文化に侵されていない自然体の日本本来の文化や思考を見いだします。沖縄を旅するたびに感じる懐かしさと心地よさは、普段閉じている自分の本質の部分が呼び起こされているせいなのかもしれません。(byまめたま)