聞いて、ヴァイオリンの詩
ヴァイオリニストの名前は千住真理子さん。言わずと知れた千住三兄弟の一人であり、わずか12歳で華々しくデビューした彼女。その経歴や家柄、ほっそりとした容姿から、さぞや華やかで女性的な演奏であろうという私の想像は、その気高く骨太な音色によって気持ちよく裏切られました。
演奏の合間、曲紹介をしながら彼女は言います「私がクラッシックを好きな理由は、どんな曲にもそこに「哀しさ」があるからです」と。それは、有名であれ、無名であれ、当時の作曲家達はみな悲惨な人生を送っていることや、時代背景としていつも戦争があり、身近に死があったことに起因するからではないかと。だからこそ時代を超えて今もなお、人が悲しみに打ちひしがれたとき、その心に寄り添う力があるのだろうと。「人々を励ますために演奏したい」世界レベルと評される演奏家は、そうシンプルに信条を語ります。
そんな千住さんの思いをもっと知りたくて読んだこの本。かつて天才少女の肩書きに押しつぶされそうになったとき、演奏家でなく一人の人間としてホスピスで演奏した経験や、身障者の方へのチャリティーコンサートでの演奏による対話の様子が語られています。
生のヴァイオリンの演奏では、実際には人が聞き取ることのできない音も波動となって観衆に届いているのたとか。それが心や体の回復に効くというのも納得できました。乾燥の激しいこの季節、お肌には大敵ですが、ヴァイオリンには最適なんだそうです。たまは気分を変えて、演奏会に行ってみるのもいいものですね。(byまめたま)