この世でいちばん大事な「カネ」の話
ハンバーガーショップの店員である彼女が、恋人の瀟洒なマンションに初めてやって来たとき、こう尋ねます。
「この部屋、家賃はいくら?」
恋人は遠慮して、「(けっこう)するほうかな」と具体的には答えません。
彼女はこう返します。
「じゃあ何? 大家さんのほうがあなたと親しいわけ? 家賃の値段が言えないなんて、おかしいわよ」
生まれや育ちの差。学歴の差。容姿の差。才能の差。価値観の差。
私たちはさまざまな「差」に時として苦しみ、時として安堵してきました。
なかでも、あからさまなのが「貧富の差」。お金に関しては、だれもが遠慮して、あけすけに語るのは品がないとどこかで思っています。
漫画家・西原理恵子さんは「カネ」を、真っ向から見据えます。そして、普通に考えればそうとう「悲惨」な、カネにまつわる体験を淡々と、しかし情熱をもって語ります。
トラウマになっても仕方がない過去が、いつしか宝物に変化していく過程を読者は追体験します。
昨年末出たばかりの本ですが、子どもの頃出会っていたら、人生が変わったかもしれない。そんな気になる、深い感動と影響力をもつ1冊です。(byこゆき)