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この状況をなんとかしようと、介護職の給料をひとり当たり2万円上げるなんて政策が出ていますが、確かにそれで少しは介護職の助けになるかもしれない。辞めていく介護職が減るかもしれない。でも本書でも言っていますが、介護職を辞めていく理由は、確かに直接的には給料が少ないことかもしれませんが、それ以上に、自分の仕事が「報われていない」と感じさせていることが問題なのであって、そこをなんとかしない限りいくら給料を上げたところで根本的な解決にはならないのではないでしょうか。
現場ではお年寄りから感謝され、やりがいを感じる。でも専門的なことを学んでどんなにいい介護をしてもそれが評価されることはなく、報酬は定められた額でしかない。
こういう状況になってしまったのは、私も含め、親が比較的健康で今のところ他人の手を借りて介護をしてもらう必要がない人々が、やがては間違いなく直面する「介護」という問題から目を背け、彼らに押しつけていることが原因にあると思うのです。できあがった制度におまかせで、無関心でいたのです。でも、もうそれではどうにもならないという状況になってしまい、今、介護職の悲鳴とも怒りともつかぬ声が上がったのだと思うのです。
ニュースとしては気になっていたものの、あまり実感として理解できていなかった介護職の人材不足の問題、本書は実際介護に携わっている多くの人々の話で構成されていてその現実を垣間見ることができ、「介護」を真剣に考えるきっかけになる一冊です。(byうしお)