ママの狙撃銃
そんな曜子には家族には話せない過去の秘密がある。
小さい頃から10年以上にわたってアメリカ・オクラホマ州で祖父と暮らしていた。常に生命の危険と隣り合わせで、銃を手放せない生活だった。銃の取り扱いは祖父から叩き込まれた。しかし祖父は、実は殺し屋。曜子も一度だけ“仕事”をしたことがある。
祖父の死をきっかけに日本へ帰国。結婚して2人の子どもにも恵まれ、穏やかな日々を過ごしていた曜子だが、ある日突然、25年ぶりの“仕事”の依頼が届いた。
家族を守るため、曜子は再び銃を手にすることに……。
荻原作品というと、「母恋旅烏」「なかよし小鳩組」などに代表されるように、思わず笑ってしまったり、しみじみさせられたりしながら、読み終えると心地よい余韻を残してくれるのが特徴だと思います。そして、その世界につい引き寄せられ、先へ先へと読みたくなる欲求がかき立てられます。
前述の作品は“ほのぼの”系でしたが、本書はそれらとは世界が大きく異なり、ハードボイルドでシリアス、スリリングな展開。どうなることかと、ハラハラさせられることしきり。
それでも最後には、荻原さんならではのやさしさと希望が感じられます。家族の存在の大きさ、生きることの意味なども考えさせてくれる本書を体験してみてはいかがでしょうか。(byこりん)