官僚との死闘七〇〇日
著者:長谷川幸洋
発行:
講談社
ISBN:978-4062148757
価格:¥1,785(税込)
たまたま本屋で平積みにされていて手にとったこの本。時の安倍首相が行おうとした、歳出の削減による財政健全化や天下りの禁止を含む公務員制度改革といった「改革」と、それにより既得権益を奪われることになる官僚の「抵抗」の様子を、安倍首相の政策ブレーンのひとりという立場から克明に描いている。マスコミなどから注目される当初予算ではなく、それほど注目されない補正予算でばらまきを行う財務省や、改革を行わせないようにするため、職員自らがずさんな年金記録をリークし政権にダメージを与える社会保険庁など、国の利益のためでなく省の利益のために官僚がとる行動は枚挙にいとまがない。
本書において特筆すべき点は、登場人物が実名で出ていること。安倍首相をはじめ、中川秀直、与謝野馨など、実際の人物を思い浮かべて読むことができるので、ニュースや新聞などのような表面的なものだけでなく、紆余曲折も含めたよりリアルな政治を感じることができ、飽きさせることがない。
それにしても官僚たちのなりふり構わぬ抵抗には驚きを通り越して呆れる。ただし、人は政治の世界の権力争いや毀誉褒貶といった「人間らしさ」に魅力を感じている面もあるだろう。そういった意味で、この本には喜劇のようなおもしろさがあった。(byうしお)