かんじき飛脚
いまではこの辺りもすっかりビルや家々に覆われてしまいましたが、江戸から続く材木問屋や職人の工房があったり、町人が喜んで食したであろう、うまい鮨や蕎麦が食べられる店がいまだ点在する街です。
さて、この小説『かんじき飛脚』は、深川一帯を飛び出し、金沢と江戸を足で結ぶ三度飛脚が命をかけて秘薬「密丸」を運ぶ、壮大な痛快活劇となっています。
松平定信が加賀藩に挑む企みが物語をおもしろくするのもさることながら、なんと言っても飛脚たちの走りが見もの。親不知子不知(おやしらず・こしらず)の断崖絶壁を駆け抜ける場面など、思わず「あッ」と悲鳴が出てしまいます。
初めて一力を読むなら、「梅咲きぬ」「あかね雲」「銀しゃり」辺りがおすすめですが、一歩先ゆく通な御仁には、どうぞこの1冊を。(byこゆき)