のぼうの城
時はいま、まさに秀吉が天下を統一しようとしていました。残る者のうち、関東の覇者・北条家を討伐すべく、北条家の支城であり、成田氏が城主を務める忍城(おしじょう)の攻撃に、秀吉第一にして寵臣の石田三成が向かいます。
対して忍城にて城主の留守中、城代となったのは、成田家当主氏長の従兄弟にあたる「成田長親」―通称「のぼう様」。「のぼう様」の「のぼう」は「でくのぼう」の「のぼう」。
長親は、城の家臣はおろか、百姓にそう呼ばれても気にしません。武術より、百姓仕事を好みます。ただし、百姓に迷惑がられるほどの不器用さ。
その「のぼう様」率いる成田家が、石田三成2万の軍に、百姓含めて2千で立ち向かいます。思わず「ランボーか!」と突っ込みたくなりますが、こちらは歴史上の事実なのだからすごい。特筆すべきは、若き家老、丹波、和泉、酒巻が、己の機知と少ない兵を駆使して戦いに挑む場面。さながら大迫力の映像を見せられているかのようです。そしていよいよ忍城が水攻めにあったそのとき、長親がとった行動は?その真意は?
歴史上の人物に血が通うことがこんなにおもしろいとは。根っからの歴史小説好きには少々軽めに感じるかもしれませんが、普段読まない私のような読者を難なく取り込む迫力があります。
なにより、これは「純情」の物語です。長親の、家臣たちの、百姓の、敵と味方の、男と女の。その根底には、日本人が今も受け継いでいるはずの美意識が流れています。
なんだか熱く語ってしまいましたが、暑い夏に、この爽快感はいかがでしょうか?(byまめたま)