ぼくは12歳
何度書棚を整理しようとも捨てられない。
そんな本の一つ、『ぼくは12歳』。
表題の脇には、「ひとり ただ くずれさるのをまつだけ」のフレーズ。
父に与えられこの本を手にしたのは、私も12歳の少し前だった。
読み始めて驚いた。 自分と変わらない年齢の著者の圧倒的な文章力、思考力。
「文章を書く人間は、こういうものだ」と思い知らされたことを覚えている。
いま読み返してみてもその感想は変わらない。
そのみずみずしさと技巧は、ボーイソプラノを失う直前の聖歌隊のようだ。
著者は12歳9か月で自ら命を絶った。
なぜだろう、思春期には漠然と死の存在が近くにある。
当時、年齢が近い著者が亡くなっていることを知って、死が急に圧倒的な現実感をもった。そして知る、「やっぱり死ぬっていけないことなんだ」と。
先日偶然、作家であり、この本の編者であり、著者の父である高史明氏がテレビ出演されているのを拝見した。そして、この本がその後、読者との書簡を収載して「新編」として発刊されていることを知った。
知らない間に、自分も彼と同じ歳の子どもがいてもおかしくない年齢になった。改めて、大人の目線で読み返してみたい。(byまめたま)