フリーダム・ライターズ
本書は、読むことで世界が広がり、書くことで理解が深まることを生徒に伝えようとした新米国語教師エリンとその生徒たちによる4年間の日記です。
彼らが通うウィルソン公立高校は、アメリカのロサンゼルスの中でも特に治安の悪いロングビーチ地区にあります。ここは、人種差別が激しく、人は肌の色で差別され、人種ごとに縄張りを持ち、暴力と銃でしか自らを守れません。それは町の中だけでなく、学校の中でも同じことでした。
新任国語教師としてウィルソン高校に赴任したエリンは、校内でもおちこぼれを集めたクラスの担任になります。学科長からは「あの子たちに本を読ませるなんて予算の無駄」と言われ、子どもたちからも「あのお嬢様、1週間で根をあげる」などとささやかれます。
しかし、彼女は、生徒一人ひとりに敬意を払い、肌の色で判断することなく、一緒に学んでいこうと奮闘します。本を買うお金がない生徒のために、学校が終わるとアルバイトをして、『アンネの日記』などを買い与えるとともに、自分の気持ちを日記に記すよう指導します。
そんな彼女を生徒も信頼していきます。そして、当初は憎しみあっていた生徒たちは徐々にお互いの共通点を認識し、暴力以外の方法、つまり言葉によって理解し合うことを学んでいきます。
その結果、「自分には将来なんてない」と言い切っていた少年たちは、銃をペンに持ち替え、スラムを抜け出し、一族で初めて大学に行ったそうです。そんな彼らの心のうちを包み隠すことなく自由に綴ったこの日記は、4年間にわたる成長の記録ともいえるでしょう。
本書は2006年にヒラリー・スワンク主演にて映画化されました。原作がよくて映画もよいという作品はめったにお目にかかりませんが、本作においては、両方ともよい作品だと思います。興味をもたれた方は、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。(byてらこ)