グッドラックららばい
地元の信金に勤め、「文鎮(ぶんちん)」とあだなされる父。セールで買った洋服しか着ない母・鷹子。高校生の長女の「積子」と中学生の次女「立子」は、二人合わせて「積立(貯金)」から命名。そんな地味で平凡だけが取り得のような片岡家。
が、積子の卒業式の後、鷹子は「わたしね、これからちょっと、家出しますから」と簡単な電話を最後に、突然家出。残された家族も、初めは驚き、怒り、戸惑いますが、各自が勝手な解釈をして納得し、自分の人生を生きていきます。
「文鎮」の父親は、何事もなかったように振る舞い、母親が残していった郵便貯金の残高が少しずつ増えていることで、妻がまっとうな人生を歩んでいることを確信。積子はセックス第一主義で定職につかず風来坊。立子は上昇志向が強くセレブになるも典型的な失敗をして出戻り。一方、突然家出した母親にはさぞかし重大な理由があるのかと思ったら、それはもう呆れてしまうことで……。
母親の突然の家出から20年間の片岡家の人々の様子が綴られています。読者は、登場人物の勝手な解釈やいい訳、人生に、腹を立てたり、笑ったり、共感したり。
大変な事態が起こっているはずなのに、著者のサバサバとした書きっぷりに乗せられて、最後には「結局みんなそれぞれ人生を楽しんでいるんだから、ま、いいんじゃない」と感じてしまうから不思議です。
読後の爽快感はピカイチ。「家族」という枠にとらわれ、肩肘張って生きていることに疲れたときにお勧めの1冊です。ただし、マネをするのはお勧めできません。(byてらこ)