青空のむこう
“You’ll be sorry when I’m dead!”
「僕が死んだら、きっと後悔するんだから」
“No, I won’t be,I’ll be glad!”
「後悔なんてするわけないじゃない。大喜びだわ」
この本の見返しには、そんなやりとりが書かれています。
本当はとても大切に思う相手なのに、思わず相手を傷つけるための言葉が出てしまう。だれにでもあることです。気持ちが落ち着けば、「さっきはごめんね」と謝ればいい。
でも、この会話を最後に、その片方は交通事故で死んでしまいました。
この本の面白いところは、残された者が主人公ではなく、死んでしまった男の子ハリーが語り始める点です。「死者の国」に行ったハリーは、150年以上前に死んだ少年アーサーと友達になったり、原始人ウグと知り合ったりします。アーサーは死に別れた母親を捜し、ウグもまた何かを探し続ける。それが見つからないと、「彼方の青い世界」に向かう気持ちになれないようです。ハリーもまたその一人です。彼はいったい何を思い残しているのでしょう?
それは、「生者の世界」に残してきた姉エギーとの仲直り。仲直りしなくちゃ、死者の国をさまよいつづけることになってしまう!
ハリーは意を決し、幽霊となって姉の元に向かうのでした。
死んでも死にきれない思いは無事かなえられるのでしょうか。残された姉や両親は安らぎを得ることができるのでしょうか。物語の終盤では、ハリーが死力を尽くし、姉にメッセージを伝えようとします。読者は、思わず手に汗を握ります。
死んだ男の子のお話。ともすれば、哀しくて切ない物語になりそうですが、ハリーの快活な性格や、小学生の男の子らしい言葉で語られるストーリー、周囲の死者や幽霊のどこか優しくて楽しいふるまい。全編に通じる佇まいは、生のエネルギーに充ち満ちています。
読んだらきっと、ジンと胸に響くことでしょう。(byこゆき)