ひとがた流し
日々の些細な出来事を報告しあっては共感し、時には互いの考え方の違いにムキになり。そうそう、いま思い出しても顔から火が出るような恥ずかしい失敗も一緒に経験しました。友人たちが、まだ幼くて、どこか不安げな顔をしていた頃のことです。
いまとなってはいっぱしの大人顔した友人たちは、最近「家族」と同義語になってきている気がします。もちろん、それは似て非なるものですが。
学生の頃からの友人である千波(通称「トムさん」。アナウンサー、独身)、牧子(作家、バツイチ独身、高校生の娘あり)、美々(元編集者、再婚、大学生の娘あり)、40歳を超えた3人の女性の日常を通して「大人の友情」が描かれています。
主人公がごく自然に入れ替わる、心地よい文章を読み進むうちに、一見何の変化もない「毎日」の積み重ねが「人生」と呼ばれることを知ります。それは、自分もしくはそこにいて当然と思っている人が「死ぬということ」を含めて。
友達を野球に例えて、美々が牧子に語る一節があります。
「…外野守ってる子とか、内野守ってる子とか、キャッチャーやってくれる子とかさ、ただ観客席にいて(中略)無責任なこというだけの子とかさ、色々いていいんだよ。そうだろう?」
「…の件はさ、あたしのところに球が飛んで来たんだ。あれはね、私が取らなきゃいけない球だった。だから、走り出して塀によじ登って、思いっきり腕を伸ばした。(中略)でね、付き合いが長いから、私にはよく分かる。――トムさんの投げる球を受けるキャッチャーは、牧子なんだ。これはもう神様が決めたんだろうね…」
あなたのキャッチャーは誰ですか?
あなたは誰のキャッチャーですか?
キャッチャーじゃなくったって、自分に飛んできた球は全力で受け止めたいものですね。(by まめたま)