はらたいらに全部
そんなはらたいらさんが急逝したのは2006年11月のこと。本書は、アルコールが原因の肝臓疾患に侵されながらも、はらさんが自分らしく生きられるよう、最期の最期まで支え続けた妻・ちず子さんによる手記です。
炊飯器の使い方、冷蔵庫の開け方、ガスの栓の閉め方……。40年以上にわたる結婚生活で、「はらさんは何もできない人だった」とちず子さんは語ります。ちず子さんにとって生活の中心は、はらさんでした。でも、それが苦になったことはありません。何を犠牲にしても、はらさんには思うままに振舞ってもらおうと、結婚当初から決めていたとか。
はらさんは仕事、お酒、たばこを人生の大きな柱としてきましたが、晩年、肝機能が低下。ここで、身体のことを考えれば禁酒すべきところ、ちず子さんはあえてそれを強制しませんでした。たとえ寿命が縮まろうとも、ストレスをかかえながら生きるより、「楽しい生活を送らせてあげたい」。そんな願いからです。曰く「私も共犯者です」。
最終的にそれがもとで肝機能は低下しますが、それでも本当につらかった時期は最期の2か月。それまではたばこもお酒も楽しみました。「やり残したことは何もない」とちず子さんが振り返る最期を迎えることができたのです。
好きなことをがまんしてでも長生きする、たとえ短命に終わっても自分らしく生きる。どちらの選択肢をとるかは人それぞれです。何を大切にするかで判断は変わるでしょう。
はらさん夫婦の姿からは、強い絆で結ばれた力の強さを感じます。熟年離婚が取りざたされる昨今、最期までお互いを尊重し合い、信頼し合い、愛し合うことの清々しさを感じてみませんか?(byこりん)