老人力 全一冊
よく一般論として、子どもは大人にない視点・視野をもっていると言われます。例えば、春の桜並木を歩いているとき、大人は咲き誇る桜の花を「ああキレイだなぁ」と見ることが普通ですが、子どもたちは花だけではなく、地面をボコボコとうねらせている根や、樹液を求めて幹に列をなすアリを楽しそうに発見します。もちろん、大人になると発見できなくなるわけではなく、子どもの発見する力とは別に、人生の経験という力を身につけて、発見のベクトルが変わったからこそ、キレイな桜の花に目を向けられるのかも知れません。
ところで、本書は、高齢者になると身につき始める「老人力」についての本です。著者が発見した老人力とは、歳を取った、もうろくした、だいぶボケてきた、ということを指す言葉です。普通に考えればあまりうれしくない力ですし、決して老いは楽観できるものではないですが、積極的にその力を認めて、もっと活用することで、人生を豊かにしようというのがその本旨です。この老人力が身につき始めると、体力や記憶力などが少しずつ捨てられていきますが、その分しがらみがなくなってスリムになり、ちょっと肩の力を抜くことでその場その場を対処できるのが老人力の強みだそうです。
おそらく、老人力は生命力の一種なのでしょう。いくら歳をとっても、自分らしく生きるための力を知らず知らずに磨いているのだとしたら、人間もなかなかにたくましいですよね。介護予防よりも、まず老人力を早めに磨くべきかも…と思ったわけです。(byこまりん)