14歳の君へ
あれは私が中学生になりたての頃。生物の授業の冒頭で先生が言った、「人は何のために生まれてくるのか?」。
「おお、中学校ではそんな疑問に答えをくれるのか!」と感激し、固唾をのんで答えを待っていると先生は言った、「種を保存するためです」。
「…なんだそりゃ、そんなの『鶏が先か卵が先か』と同じじゃん…」思春期の私にとって、その答えは完全に肩すかしだった。もちろん先生は「人間=生物」の話をしているわけで、それはそれで自然界では真実だ。先生が教えているのは「理科」であって、「哲学」じゃないのだから。
さて、タイトルを目にした途端、そんな昔の記憶が蘇り、思わず手にしたこの本。哲学の先生が、「友愛について」「社会について」「お金について」「幸福について」等々を、やさしい言葉で語りかけるように説明をしてくれる。個人的には「個性について」のなかの「…たくさんの若者や、大人が落ち込んでいる『自分探し』というのは、こういう不毛なものなんだ」という言葉に、目から鱗が3枚ほど落ちた。
本屋でタイトルを眺めていると、意外に「14歳の〜」「13歳からの〜」といったタイトルの本が多いことに気が付く。その時期にこの本に出会える子どもたちはラッキーだ。納得できるかどうかは別にして、ちゃんと答えてくれる大人がいることに意義がある。
ちなみに、冒頭の思春期の私の疑問に直接答える項目はなかった。それはきっと、いろいろな経験を踏まえた後、人それぞれの答えが、それぞれの時期に出すものなのだろう。思春期の疑問が解決しないまま大人になっちゃった人におすすめの一冊。(byまめたま)