風車祭(カジマヤー)
『長生きしたい』――いまの日本、何割ぐらいの人がそう心から願っているのでしょう?
以前なら万人共通の、あたりまえの願いごとであったはず。現代ならばさしずめその前に「お金の心配がなければ」とか「さみしくないなら」といった但し書きが付きそうです。
表題の「風車祭(カジマヤー)」とは、沖縄(物語の舞台は石垣島)で、数え97歳の長寿を祝う祭りのこと。登場人物の一人であるオバァの「フジ」は、幼い頃から風車祭だけを目標に、「金も愛も権力も、そんなものは糞である」と言いはなち、たとえ腐ったクーブイリチー(昆布の炒め煮)を食べて食中毒になろうが、寝込みを襲われ(襲い?)800回目のバージンを奪われようが、生き延びて、今日晴れの日を迎えます。
生きることに貪欲であること、かっこつけないかっこよさ、沖縄でとりわけ「オバァ」が尊敬され、愛される理由の一端がここにあるのかもしれません。
16歳の武志と、18歳(実年齢246歳)のピシャーマの清らかで切ない恋を軸に、手強いフジを出し抜く5歳の郁子や、武志に恋心を抱く豚のギーギーなど、脇の脇の登場人物まで誰もが人間臭くて魅力的。全体を通して色濃く描き出される沖縄文化になぜか懐かしさを感じ、心癒されます。
なんだかちょっと元気がたりないと感じるとき、あれやこれやと難しく考え過ぎてしまうときに、お勧めしたい一冊です。ただし、電車やバスで読むにはご注意を。5行に1回の笑いに耐えきれず、思わず声を出して笑っちゃいますから。(byまめたま)