ボクの失敗談

　ボクが日本に来てから35年になります。
　好きな言葉は「義理と人情」「義理が廃ればこの世は闇だ」「持ちつ持たれつ」「郷に入らば郷に従え」。今でこそ日本の文化にだいぶ詳しくなったけれど、大使館員として来たばかりの頃は、ホント失敗もいっぱいしました。その時のエピソードを一つ。

日本は第二のふるさとなんだ

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　日本に来て間もない頃、あるお葬式に行くことになったんです。日本のお葬式はまったく知らないし、行くのも初めて。
　式場についたら、みんな列に並んでるから、後ろに並んでみた。そしたら玄関で、みんなハッキリ聞こえない言葉を何かゴニョゴニョ言いながら入っていく。その時、外国人はボクひとり。黙って中に入ったら悪いし、何かいわなきゃいけなさそうだと思った。
　ボクはパニックになっちゃって、思いっきり、「今日はおめでとうございます！」って言っちゃった…。
　だってなんにも知らなかったんだもん。

　そのあと、他の人のお焼香してるのを後ろから見てた。３回ずつ何かつまんで口の方に持っていってる。それでボク、てっきりお焼香って、何か食べてるんじゃないかなって思ったんだ。
　ボクの順番が来た。前に立って、最初に目に入ったのはお供えのバナナ、ミカン。でも誰も手を出してない。やっぱりこの箱の中のお香をみんな食べてんだ。思い切って、１回、２回、３回、全部口の中に入れた。
　まずかったね～、ホントまずかった…。　

　帰り際、みんなはご遺族に「ご愁傷様です」って言いながら帰ってる。それがボクにはよく聞き取れなかったんだ。とりあえずマネしとこうと思って、「ごちそうさまでした！」って言っちゃった。だってお焼香の入れ物、空っぽにしちゃったしね。

　ホント、日本に来てからいろんな失敗をしました。