誰でも入れる保険
「持病があっても入れます」という保険商品のコマーシャルをよく目にする。
保険業界では無選択型保険と呼ばれている。実際、末期のがん患者でも加入することができるし、認知症の方でも、要介護5の方でも加入はできる。被保険者自身が署名できないときは、成年後見人による代理署名が必要となる。
ある死亡保障の商品を一例にとると、契約から2年以内に亡くなった場合、契約した保険金額が払われない。それでも契約から死亡までに支払った保険料の総額が戻ってくる。現状の銀行金利を考えれば損な話ではない。2年を経過すると契約とおりの保険金額が保障される。年齢によって差が生じるが、契約後10~12年くらい経過すると、支払った保険料が死亡時に受け取れる保険金額を上回る。それでも万一の時に必要となる高額な葬儀費用等を考えると必要性はあるだろう。
商品自体が悪いとは思わないがアピールの仕方にいささか疑問を感じてしまう。
まず一つはこういったコマーシャルが多く流れるようになり、「持病があったら普通の保険には入れない」という思い込みが、消費者、特に高齢の方に広がっていること。これは勘違いである。
各生命保険会社は保険契約を行う際、通常医的診査を行う。持病のある方は事前に記入する「告知書」にその内容を記入しなければならない。「告知書」の内容に偽りや記入漏れがあった場合、保険金が支払われないこともある。いわゆる「告知義務違反」というやつだ。保険会社は告知された内容に応じて査定を行い、持病等がある被保険者でも必要に応じて「特別条件」を付加した上で加入を認める場合もある。
「特別条件」の内容は、死亡保障の場合、保険料の割り増しないし契約後一定期間における保険金の削減、あるいはその両方ということもある。医療保障の場合は保険料の割り増しの他、特定の疾病または特定臓器等指定された部位の疾患に関して、一定期間あるいは全期間において保障しないというもの。たとえばそういった「特別条件」が付加されたとしても、上記の無選択型保険に比べれば保険料の負担が少なかったり保障範囲が広かったりすることが多い。
各保険会社のコールセンターでは無選択型保険の問い合わせが入った時でも、まずは医的診査が必要な通常の保険商品での加入を促している。しかし営業の現場ではどうだろうか。収益率の低い無選択型保険は、当然営業マンが受け取る販売手数料も低い。医的診査の必要な商品に申し込んでいただいた上で加入ができず、最終的に無選択型の商品ということになれば時間と手間ばかりがかかってしまう。
いずれにしても、一般消費者に保険商品に関する詳細な内容がきちんと伝わっているケースは少ない。簡単なように言っても、法律に基づく契約行為である以上、自動販売機的に保険商品が売られてしまうのは問題がある。
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