マイホーム借上げ制度
リバースモーゲージとは別に高齢者が住宅資産を活用して現金収入を得る手段として最近注目されているのが「マイホーム借上げ制度」だ。大手住宅メーカーなどによって組織された一般社団法人移住・住みかえ支援機構(略称JTI)が運営している。
子どもが独立した後夫婦二人で一戸建ては広すぎる、高齢者だけで生活するには一戸建てより共同住宅の方が安心だ、介護状態にあり施設入所している為自宅が空き家になっている、老後は海外に移住したい等、様々な事由で居住不動産から転居する際に機能する。
大まかな利用条件として、利用者の年齢は50歳以上。住宅が共有であれば共有者全員の同意が必要。一定の耐震性が確保された住宅である事。土地・建物とも抵当権が設定されていないことなど。
リバースモーゲージとの違って当該不動産を賃貸する為住み続ける事は出来ない。逆に不動産を担保提供する必要はなく、期間を決めて戻り住む事も出来るし、死亡時には子世代に相続させる事が出来る。賃貸料は相場の7割程度だが、オーバーローンになる心配もなく空き家になっても高齢者住宅財団(国の基金)から終身で最低家賃の保証を受けられる。
もう一つの大きな違いとして、土地の評価だけで建物が一切評価されないリバースモーゲージに対して、マイホーム借上げ制度で重視されるのは建物の耐震性というところ。JTIに協賛する住宅メーカーではこれから家を建てたいという現役世代に対しても同制度の情報提供を行い長期にわたるライフプラン作成を促している。
また、JTIと高齢者住宅財団ではマイホーム借上げ制度だけでなく住みかえ全般をアドバイスできるハウジングライフプランナー(HLP)という資格を導入し高齢者の住みかえをサポートしている。
JTIの設立が平成18年、同制度が実質稼動したのは翌年だが、昨年11月「日本の住宅」を特集したニュース番組ですでに200件以上の利用実績があると紹介されていた。
対してリバースモーゲージは東京都武蔵野市が制度を導入したのが1981年、厚生労働省が全国規模で導入したのが2002年、いまだ200件足らずの利用実績だ。
それぞれの制度に長短があり必ずしもマイホーム借上げ制度の方が優れているとは限らない。にもかかわらずこの普及速度の差はやはり官・民の制度に取り組む姿勢の差ではないだろうか。
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