リバースモーゲージ
リバースモーゲージとは高齢者が居住している不動産を担保に生活資金の融資を受ける制度だ。居住不動産は所有しているものの年金等による現金収入が少ない高齢者を対象にしている。貸付を受けた金額は死亡後に当該不動産によって清算するというもの。
世界的な高齢化が叫ばれる中、先進諸国では普及が進んでいて公的な制度との認識を受けている国もある。日本でも1981年に東京都武蔵野市が初めて導入している。以降各自治体や信託銀行が参入し2002年には厚生労働省が全国規模での導入に踏み切った。2003年度以降厚生労働省貸付原資の3分の2を補助する形で、全国都道府県が「長期生活支援資金貸付制度」を導入し現在に至っている。大まかな概要として、同制度の貸付を受ける為には世帯構成員が本人・配偶者・親まででその全員が65歳以上であり推定相続人全員の同意が必要。貸付限度額は居住する土地の評価額の7割。建物の評価は無い。金利は3%か長期プライムレートのいずれか低い方が適用される。
高齢者になるとある程度の蓄えがあってもそれを取り崩すのには抵抗がある。介護や病気等の将来不安を抱えている以上、日々の生活は定期的な収入でまかないたいものであろう。
しかし現状この制度が充分に普及しているとは言い難い。国内での制度利用実績は昨年4月までで約150件程度だという。諸外国よりも高齢化が深刻だというのになぜこうも進まないのか。
そこには借り手側と貸し手側双方が抱えるリスクが壁となっている。借り手が長生きした場合存命中に融資総額が担保評価を超えてしまう可能性がある。その場合当然融資はストップする。貸し手側は不動産相場や金利の変動リスクを絶えず抱える事になるし、借り手が予想外に長生きすれば回収・清算が遅れる事になる。
「鶏と卵」のお話になってしまうが、こうした双方のリスクを回避する為にも制度普及が不可欠である。例えば1万件を超える事例ともなれば、制度利用後僅かの期間で亡くなるケースも否応無く発生する。民間の保険商品と同様「大数の法則」に基づいた「相互扶助」制度とすることにより、担保評価を超えた場合でも減額等の処置により借り手に終身での生活資金融資を保証する事が出来るのではないか。
何故かこの手の福祉政策は「仏をつくって魂入れず」の状態になっているものが多い気がする。
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