マスコミの取材
働きながら親を介護しているという立場でテレビ・ラジオ・新聞社などの各マスコミから取材を受けることがたまにある。対象が繊細なだけにこの分野の記者さんに興味本位な聞き出しをする“ジャーナリスト”というイメージは無く、誠実な方が多い。私自身は可能な限り取材に応じている。しかし介護者の集団においてはマスコミの取材に否定的な向きが強い。
マスコミ側が取材の対象として最も望んでいるのは、私のようにフリーランスな仕事をしながら身体の不自由な親を介護している者というより、普通に会社務めをしながら認知症の親御さんを介護している30~50代くらいの男性介護者のようだ。日中目を離さなければならない状況でどのような介護サービスを受け対応しているのか、現制度にどのような不満を抱きどのような改善を望んでいるのか様々な現状を取材したいのだろう。記者さんから紹介を頼まれるので、数人の知り合いに頼んでみたが色よい返事はいただけない。
先日も、ご両親が亡くなるまで介護をしていた専門職で、独立している50代の男性と話をしていたら「母親の存命中にマスコミの取材を受け、実名で記事が出た時に兄弟から非難された」と語っていた。記事の内容までは聞かなかったが、やはり身内に要介護者がいることを公にするのはためらう方が多いようだ。私自身も、このサイトで書かせていただいている内容は匿名だからこそ書けるものもがある。
取材で嫌な思いをさせられたことはあまり無いが、某テレビ局がいきなりわが家にカメラを入れたいといってきた時はさすがに驚いたし、当然断った。
マスコミによる捏造報道が幾度か問題とされた昨今、実名報道にこだわる理由もわからなくは無い。しかしながら実名を出さないという条件ですら取材に応じない介護者がほとんどであるのも事実だ。この溝が埋まる様子は見えてこない。
私が接触した記者さんのほとんどは自らの役割を熟知し、増え続ける声無き弱者の現状をとらえ広く告知することにより行政によるきちんとした制度対応を促そうとしている。
悲惨な事件となって初めて報道されるという事態を無くしていかなければならない。
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