成年後見制度が進まない理由 2
成年後見人の申し立てを行う際、費用としてかかるのは収入印紙・登記印紙・切手代等だが、もっとも高額にかかってしまうのは「精神鑑定」だ。刑事事件における犯罪者の異常行動に対して行われる、いわゆる「刑事精神鑑定」は公費でまかなわれている。しかし、「民事精神鑑定」に要する費用は申立人の負担となる。成年後見申し立てに伴う「精神鑑定」は、精神障害が極めて重篤であるなど特別な事由がない限り省略することはできない。費用は概ね5~15万円くらい。稀に20万円以上かかっているケースもあると聞く。被後見人となる方の状態・生活環境や鑑定を依頼する医療機関などによって変わってくる。鑑定に要する期間も、1か月程度かかっているようだ。
平成18年5月に最高裁判所で「新しい成年後見制度における診断書と鑑定書作成の手引き」が作成されて以降は、多少簡略化されたと聞いている。
さらに公民権の停止というのも大きな問題点だ。成年後見人が登記され、被後見人となると選挙権を失ってしまう。国会・地方議会を問わず、成年後見制度の普及を訴える議員がほとんどいないのもうなずける。
わが国が成年後見制度を導入するにあたって参考にしたというドイツの世話法では、世話人が選出されても選挙権が剥奪されることはない。制度全体も行政が統括し、本人調査・必要性の把握・世話人の確保・世話人協会への支援・裁判所との連携など、あらゆる面において積極的に関与しているという。制度導入は日本より8年ほど早いが、世話人の登録は100万人を超えている。国全体の人口は8千万人程度だから、制度普及率は日本の10倍以上だ。
日本でも今年7月には、弁護士・司法書士をはじめとしたさまざまな専門家・研究者・実務家によって組織された日本成年後見法学会から「成年後見実務改善と制度改正のための提言」が出され、現制度の問題点を指摘し改善の要求をしている。こと「選挙権の剥奪」に関しては、基本的人権の侵害に該当し違憲の疑いが濃厚であると記載されている。
こうした事実を踏まえ立法・司法・行政のそれぞれに成年後見制度の健全な普及に取り組んでいただきたい。
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